秋田県の八幡平(はちまんたい)に位置する後生掛温泉(ごしょうがけおんせん)は、古くから「馬で来て足で帰る」と言われるほど、高い効能を誇る名湯として知られています。なかでも、地熱を利用した「オンドル」での宿泊は、他の温泉宿では味わえない独特の魅力にあふれています。
今回は、実際に足を運んだ際の記録をベースに、後生掛温泉のオンドル宿泊記をお届けします。大地のエネルギーを直接肌で感じる体験は、日々の疲れを癒やしたい方にとって特別な時間になるはずです。初めて湯治(とうじ)を体験する方にも分かりやすく、その魅力や過ごし方のポイントを詳しく解説していきます。
湯けむりが立ち込める山あいの景色や、歴史を感じる建物の雰囲気、そして何よりも体を芯から温めてくれるオンドルの心地よさ。この記事を読めば、あなたもきっと秋田の秘湯へと足を運びたくなるでしょう。
後生掛温泉のオンドル部屋に宿泊する魅力

後生掛温泉の最大の特徴といえば、やはり天然の蒸気を利用した「オンドル」です。通常の旅館での宿泊とは一味違う、この場所ならではの魅力を紐解いていきましょう。
オンドルとは?大地の熱を直接感じる仕組み
オンドルとは、もともと韓国などの伝統的な住宅で見られる床下暖房システムのことですが、後生掛温泉のものは火を使わず、地中を通る天然の温泉蒸気を利用しているのが特徴です。建物の床下に温泉の熱が通っており、部屋全体が常にポカポカと温められています。
この仕組みは、火山地帯である八幡平の豊かな地熱をそのまま活用したもので、非常にエコロジーかつパワフルです。部屋に入ると、じんわりとした温かさが足元から伝わってきて、まるで大きな湯たんぽの上に乗っているような感覚になります。エアコンやストーブの乾燥した熱とは異なり、湿度を含んだ柔らかな温かさが体を包み込んでくれます。
また、オンドル部屋は「湯治部(とうじぶ)」と呼ばれるエリアにあり、昔ながらの素朴な雰囲気が残っています。豪華な設備はありませんが、自然のエネルギーを直接受け取りながら過ごす贅沢は、現代の都市生活では決して味わうことができない貴重な体験となるでしょう。
体の芯から温まる独特の健康効果
オンドルの上で横になると、数分もしないうちに背中からじわじわと熱が伝わり、全身の血行が良くなっていくのが分かります。この「寝ているだけで温まる」という体験は、冷え性に悩む方や肩こり・腰痛を抱える方にとって、まさに理想的な環境と言えるでしょう。
後生掛温泉のオンドルは、単に部屋を暖めるだけでなく、岩盤浴のような効果を長時間にわたって得られるのが魅力です。じっくりと汗をかくことで、体内に溜まった老廃物の排出を促し、新陳代謝を高める効果が期待できます。実際に宿泊してみると、翌朝の体の軽さに驚く人が多いのも納得の心地よさです。
また、蒸気による適度な湿度が保たれているため、喉や肌の乾燥が気になりにくいのも嬉しいポイントです。冬の厳しい寒さの中でも、半袖で過ごせるほど室内は温かく、大地のパワーが冷え切った体を内側からじっくりと解きほぐしてくれます。この温熱体験こそが、多くのリピーターを惹きつける理由なのです。
現代人こそ体験したいデジタルデトックスの場
オンドル部屋での過ごし方は、至ってシンプルです。テレビや過剰なサービスを遠ざけ、ただ静かに横になって温まったり、本を読んだりして過ごします。窓の外に広がる八幡平の原生林や、立ち上る噴煙を眺めていると、日常の忙しさやスマートフォンの通知を忘れさせてくれます。
後生掛温泉は電波が入りにくい場所もあり、あえて「何もしない時間」を自分に許すことができます。波打つような熱の揺らぎを感じながら、自分の呼吸に集中する時間は、精神的なリフレッシュにも最適です。情報過多な現代社会において、このように五感で自然を感じる時間は、脳を休めるための大切な休息となるでしょう。
オンドルでの滞在は、単なる宿泊以上の価値があります。それは「自分の体と対話する時間」を手に入れること。熱を帯びた床の上で、凝り固まった体と心がゆっくりと緩んでいく感覚をぜひ味わってみてください。
オンドル宿泊記でチェックしたいお部屋の様子

次に、実際にオンドル部屋に宿泊する際、どのような空間で過ごすことになるのか、お部屋の詳細や持ち物について解説します。一般的なホテルとはシステムが大きく異なるため、事前のイメージ作りが大切です。
素朴な空間が心地よい大部屋と個室
後生掛温泉のオンドル部屋には、大きく分けて「個室」と「大部屋(相部屋)」の2タイプがあります。個室はプライバシーが確保されており、家族や友人と気兼ねなく過ごしたい方におすすめです。一方、大部屋は昔ながらの湯治文化を象徴するスタイルで、一人旅の方や、より安価に宿泊したい方に選ばれています。
室内には、畳やゴザが敷かれており、その下から熱が伝わってきます。装飾は最小限で、まさに「寝るため、癒やすための場所」といった趣です。古い建物ではありますが、手入れが行き届いており、どこか懐かしい実家のような安心感があります。木のぬくもりと、ほのかに漂う硫黄の香りが、秘湯に来たことを実感させてくれます。
また、部屋には小さな机や棚がある程度で、布団は基本的に自分で敷くスタイルです。このセルフサービスが、自分のペースで過ごせる気楽さにもつながっています。豪華なベッドはありませんが、温かい床の上に布団を敷いて眠る体験は、驚くほど深く心地よい眠りをもたらしてくれるでしょう。
持ち物とレンタルの賢い活用法
湯治部の宿泊では、基本的にアメニティ類が用意されていません。浴衣、タオル、歯ブラシ、そして布団までもが別料金、または持参という形になります。宿泊費を抑えたい方は、家から使い慣れた寝巻きやタオルを持っていくのが賢い方法です。特に、大量に汗をかくため、着替えは多めに用意しておくことをおすすめします。
一方で、荷物を増やしたくない場合は、現地のレンタルサービスを利用しましょう。布団一式や毛布、浴衣などは有料で貸し出しが行われています。初めての方は、まずは最小限の荷物で向かい、必要なものを現地で借りるのがスムーズです。また、オンドルの熱で床がかなり熱くなる場合があるため、厚手の敷物やバスタオルがあると温度調節に便利です。
【持参すると便利なものリスト】
・吸湿性の良い綿のパジャマ(複数枚)
・汗拭き用のフェイスタオル
・床に敷くための大判バスタオル
・洗面用具一式
・サンダル(館内の移動に便利)
オンドル部屋での過ごし方のコツ
オンドル部屋で快適に過ごす最大のコツは、こまめに「温度調節」と「水分補給」を行うことです。床からの熱は想像以上に強力で、ずっと同じ姿勢で寝ていると低温火傷のような状態になったり、のぼせたりすることがあります。敷布団の下に毛布を挟んだり、寝る場所を少しずつずらしたりして、自分に最適な温度を探りましょう。
また、室内にいるだけで自然と汗をかくため、意識的に水を飲むことが重要です。湯治部には共有の冷水機や水道がありますが、お気に入りの飲み物をあらかじめ用意しておくと安心です。脱水症状を防ぐためにも、枕元には常に飲み物を置いておくようにしてください。
さらに、部屋でのリラックスタイムを充実させるために、読みたい本や静かな音楽を用意するのも良いでしょう。テレビのない静寂の中で、床から伝わる熱に身を任せ、心身を解き放つ時間は、何物にも代えがたい贅沢なひとときとなります。自分だけの「癒やしのルーティン」を見つけるのも、オンドル宿泊の楽しみの一つです。
泥湯から箱蒸しまで!多彩な名物温泉

オンドルで体を温めるだけでなく、後生掛温泉には「七つの名物風呂」と呼ばれる、バリエーション豊かな温泉があります。それぞれの特徴を知って、心ゆくまで湯巡りを楽しみましょう。
美肌効果も期待できる「泥湯」の楽しみ方
後生掛温泉の代名詞とも言えるのが、全国的にも珍しい「泥湯(どろゆ)」です。浴槽の底に溜まった滑らかな灰色の泥を体に塗って楽しむスタイルで、ミネラルを豊富に含んだ泥が肌を整えてくれます。泥は非常に粒子が細かく、肌の上でとろけるような感触がたまりません。
この泥湯にはピーリング効果があり、古い角質を優しく落としてくれるため、湯上がりは肌がツルツルになると評判です。ただし、泥を洗い流す際は、周囲の方に飛ばないよう配慮しながら行いましょう。また、アクセサリーなどは硫黄成分で変色する恐れがあるため、入浴前に必ず外しておくことが大切です。
泥湯の源泉は非常に濃厚で、全身を泥に浸していると、地球のエネルギーを直接肌に取り込んでいるような不思議な充足感に包まれます。露天風呂にも泥がある場所があり、八幡平の澄んだ空気を感じながら泥パックを楽しむ時間は、最高のセルフケアとなるはずです。
顔を出して温まるユニークな「箱蒸し風呂」
写真映えもする非常にユニークな施設が「箱蒸し風呂」です。首から下を木箱に入れ、中を温泉の蒸気で満たすスタイルの入浴法で、顔だけが外に出ているため、のぼせにくいのが大きなメリットです。まるで一人用のサウナのような感覚で、集中的に体を温めることができます。
箱の中は非常に高温の蒸気で満たされており、数分入っているだけで滝のような汗が出てきます。しかし、外の空気を吸いながら入浴できるため、サウナの息苦しさが苦手な方でも比較的長く楽しむことができます。肩までしっかり温まるので、肩こりや首の疲れを感じている方には特におすすめです。
この箱蒸し風呂は、古くからの伝統的な入浴法ですが、現代のデトックスニーズにも完璧に応えてくれます。木箱がずらりと並んだ光景は後生掛温泉ならではの景色であり、ここを訪れたなら一度は体験しておくべき名物です。湯船に浸かるのとはまた違った、蒸気による強力な温熱効果を実感してみてください。
交互浴でリフレッシュする「火山風呂」
「火山風呂」は、底からブクブクと気泡が湧き出すダイナミックなジャグジー風呂です。温泉の成分に加えて、気泡によるマッサージ効果が得られるため、筋肉の疲れをほぐすのに適しています。泡が肌を刺激する感覚が心地よく、リフレッシュしたい時にぴったりの浴槽です。
他にも、神経痛に良いとされる「神経痛の湯」や、滝のように温泉が流れ落ちる「打たせ湯」など、目的別の浴槽が揃っています。これらを順番に巡ることで、全身の巡りがさらに良くなります。ただし、後生掛温泉は成分が非常に強く、湯あたりもしやすいため、長湯のしすぎには注意しましょう。
入浴の合間には、足湯や休憩スペースを活用し、無理のない範囲で湯巡りを楽しむのがコツです。複数の浴槽を巡ることで、それぞれの湯の質感や温度の違いを感じることができ、温泉の奥深さをより一層堪能することができます。
| 風呂の種類 | 主な特徴 | おすすめの方 |
|---|---|---|
| 泥湯 | ミネラル豊富な泥でパック | 美肌・肌荒れが気になる方 |
| 箱蒸し風呂 | 顔を出して蒸気で温まる | 肩こり・サウナ好きの方 |
| 火山風呂 | 底から湧き出す強力な気泡 | 血行促進・リフレッシュしたい方 |
| 打たせ湯 | 高い位置から落ちる湯の刺激 | 腰痛・筋肉疲労がある方 |
自炊派も安心!湯治村の設備と食事

湯治部の宿泊は、基本的に「自炊」がメインのスタイルです。自分で食事を作る楽しさや、売店で手に入る名物グルメについて詳しくご紹介します。これもまた、後生掛温泉ならではの文化体験です。
広々とした共同炊事場の使い勝手
湯治部には、宿泊者が自由に使用できる大きな「共同炊事場」があります。ここにはガスコンロ、流し台、そして調理器具や食器類が一通り揃っており、食材さえ持ち込めば誰でも料理をすることができます。見ず知らずの宿泊客同士が、料理を通じて自然と会話を交わすのも、湯治場ならではの温かい光景です。
炊事場は清潔に保たれており、火力が強いコンロがあるため、本格的な調理も可能です。地元の直売所で買った新鮮な野菜や秋田名物のきりたんぽなどを持ち込んで、自分だけのオリジナル料理を楽しむのも良いでしょう。冷蔵庫は共有のものがある場合が多いですが、名前を書いて保管するなど、ルールを守って使用しましょう。
自炊の魅力は、何といっても「自分の体調に合わせた食事ができる」点にあります。温泉でデトックスした後は、あっさりとしたお粥やうどんを食べるなど、胃腸に優しいメニューを選べるのは自炊ならではのメリットです。慣れない方は、レトルト食品やカップ麺から始めてみるのも一つの手です。
温泉卵や黒たまごを味わう売店情報
料理をするのが面倒な時や、小腹が空いた時に重宝するのが館内の「売店」です。ここには軽食やカップ麺、飲料のほか、地元秋田のお土産品も並んでいます。なかでも絶対に見逃せないのが、後生掛温泉名物の「黒たまご」です。温泉の熱と成分で真っ黒に染まった殻を剥くと、中からは旨味が凝縮されたホクホクの卵が現れます。
この黒たまごは、硫黄の香りがほんのりと漂い、絶妙な塩加減でそのままでも非常に美味しくいただけます。1個食べれば寿命が延びるとも言われる縁起物で、湯上がりの栄養補給にもぴったりです。また、蒸したての温泉まんじゅうや地元の牛乳なども販売されており、おやつタイムを彩ってくれます。
さらに、売店では自炊に必要な最低限の調味料やレトルト食材、パンなども扱っています。山奥の施設であるため、下界のスーパーほど品揃えが豊富ではありませんが、急な入用時には非常に助かる存在です。地元の人しか知らないような珍しい保存食に出会えることもあるので、ぜひチェックしてみてください。
食事付きプランと自炊の選び方
「湯治体験はしたいけれど、料理は苦手」という方のために、実は食事付きのプランも用意されています。隣接する旅館部での豪華な懐石料理とは異なりますが、栄養バランスを考えた「湯治食」を提供してもらうことができます。秋田の郷土料理を盛り込んだ、体に染み渡るような優しい味わいの定食が一般的です。
自炊を選ぶか食事付きを選ぶかは、滞在期間や旅のスタイルによります。1〜2泊の短期滞在であれば、食事付きプランでゆったり過ごすのが楽でしょう。一方で、3泊以上の長期滞在や、自分のペースを乱したくない場合は、自炊の方が自由度が高く、コストも抑えられます。
最近では、一晩だけ自炊に挑戦し、残りの日は食堂を利用するというハイブリッドな過ごし方をする人も増えています。自分の体調や気分に合わせて、柔軟に食事のスタイルを選べるのも、後生掛温泉の懐の深さと言えるでしょう。どちらを選んでも、温泉地ならではの「食」の豊かさを感じることができます。
後生掛温泉へのアクセスと周辺の見どころ

標高の高い場所にある後生掛温泉へ向かうには、事前のルート確認が不可欠です。また、温泉のすぐそばには、地球の息吹を感じられる絶景スポットも点在しています。
路線バスと車のアクセスルート
車でアクセスする場合、東北自動車道の鹿角八幡平(かづのはちまんたい)ICから約40分ほどで到着します。八幡平アスピーテラインという絶景のドライブコースを通ることになりますが、冬期間(通常11月上旬〜4月中旬)は積雪のため通行止めになる区間があるため、注意が必要です。冬場は「八幡平樹海ライン」側のルートを確認してください。
公共交通機関を利用する場合は、JR花輪線の鹿角花輪駅から路線バスに乗るのが一般的です。本数が限られているため、あらかじめ時刻表をしっかりと確認しておきましょう。また、盛岡駅からも「八幡平頂上」行きのバスが出ており、こちらも観光客に多く利用されています。
山道はカーブが多く勾配も急ですが、車窓から見える景色は圧巻です。特に秋の紅葉シーズンは、山全体が黄色や赤に染まり、息を呑むような美しさの中を移動することになります。運転に自信がない方は、冬場は特にバスの利用を検討することをお勧めします。プロのドライバーが運転するバスなら、雪道でも安心して移動できます。
自然の驚異を感じる「後生掛自然研究路」
温泉の建物のすぐ裏手から始まるのが「後生掛自然研究路」です。一周約40分ほどの散策路で、地面のあちこちから蒸気が噴き出し、ボコボコと泥が湧き上がる「泥火山」を間近で見ることができます。硫黄の匂いと立ち込める白い煙が、まさに生きている地球を実感させてくれる場所です。
この遊歩道は整備されていますが、場所によってはかなり熱い蒸気が当たることがあるため、足元には十分注意して歩きましょう。巨大な泥火山や、地獄谷のような風景は圧巻の一言。温泉に浸かって内側から温まった後は、この風景を眺めながらゆっくり歩くことで、さらに非日常感を味わうことができます。
特に「大泥火山」は、日本でも最大級の規模を誇り、地球のエネルギーが噴出する様子は迫力満点です。散策路の途中にはベンチもあり、雄大な景色を眺めながら休憩することも可能です。カメラを片手に、ここでしか見られないダイナミックな光景を写真に収めるのも楽しみの一つです。
近隣の「大沼キャンプ場」やビジターセンター
後生掛温泉から少し車を走らせると、八幡平の豊かな自然をより深く学べる「八幡平ビジターセンター」や、美しい湿原が広がる「大沼」があります。ビジターセンターでは、このエリアの動植物の生態や火山の仕組みが分かりやすく展示されており、散策前に立ち寄ることで観光がより充実します。
大沼の周囲には木道が整備されており、高山植物を楽しみながらのんびりとウォーキングするのに最適です。季節ごとに姿を変える湿原の景色は美しく、特に夏場のニッコウキスゲや、秋の紅葉が水面に映る様子は見事です。体力に自信のある方は、ここからさらに本格的なトレッキングコースへ足を延ばすこともできます。
また、近隣にはキャンプ場や他の個性的な温泉宿(玉川温泉や藤七温泉など)も点在しており、数日間かけて八幡平エリアを巡るのも贅沢な過ごし方です。後生掛温泉を拠点にして、この広大な国立公園の魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。
後生掛温泉のオンドル宿泊をより快適にするための注意点

最後に、オンドル宿泊を最高のものにするための細かな注意点を確認しておきましょう。少しの工夫で、滞在の快適度はぐんとアップします。
乾燥対策と水分補給の重要性
オンドルの熱は非常に心地よいものですが、長時間滞在していると体内の水分が刻一刻と奪われていきます。特に寝ている間は無自覚に汗をかくため、「喉が渇く前に飲む」ことを徹底してください。水だけでなく、失われた電解質を補えるスポーツドリンクなどを用意しておくと、より効果的です。
また、湿度はある程度保たれていますが、顔の近くは熱気で乾燥しやすく感じることがあります。気になる方は、濡らしたタオルを枕元に置いたり、簡易的な加湿器(または水を張ったコップ)を置いたりすると良いでしょう。また、肌の乾燥を防ぐために、保湿クリームやオイルなどを持っていくのも忘れずに。
お酒を飲む方は、温泉とオンドルの熱で普段よりも酔いやすくなることがあるため、飲酒量は控えめにするのが無難です。アルコールの利尿作用によってさらに脱水が進むこともあるため、お酒と同量以上の水を一緒に飲むように心がけましょう。健康のための湯治で体調を崩しては元も子もありません。
適切な服装と着替えの回数
オンドル部屋では、とにかく「汗をかくこと」を前提とした服装選びが重要です。おすすめは、吸湿性が高く、肌触りの良い綿100%の素材です。厚手のスウェットなどは熱がこもりすぎてしまうため、薄手のTシャツやロンT、ゆったりとしたリラックスパンツが良いでしょう。
一晩過ごすと、パジャマが汗でびっしょりになることも珍しくありません。そのままにしておくと体が冷えてしまうため、着替えは通常の旅行よりも多めに用意してください。湯治部にはコインランドリーが設置されていることも多いので、長期滞在の場合はそれを利用して洗濯するのも賢い方法です。
また、館内の移動には、脱ぎ履きしやすいサンダルがあると非常に便利です。温泉への往復や自炊場への移動など、意外と歩く機会が多いため、足元が楽なものを選びましょう。また、温泉の成分が強いため、万が一汚れてもいい服、硫黄の匂いがついても気にならない服を選ぶのがポイントです。
周囲への配慮とマナーについて
湯治部は、健康回復を目的として長期滞在している方も多くいらっしゃいます。そのため、一般的な観光旅館よりも「静寂」が重んじられる傾向にあります。廊下を走る音や、夜遅くまでの大声での会話などは控え、落ち着いた環境をみんなで作り上げるという意識が必要です。
また、共同で使用する施設(炊事場や洗面所)は、次に使う人が気持ちよく使えるよう、使用後に軽く清掃するのがマナーです。ゴミの分別ルールもしっかりと守りましょう。大部屋に宿泊する場合は、他の方のスペースに荷物を広げすぎないなど、譲り合いの精神が欠かせません。
温泉マナーに関しても、体をしっかり洗ってから湯船に浸かる、タオルを湯船に入れないといった基本を徹底しましょう。特に泥湯では、泥を跳ねさせないように注意するなど、独特のルールもあります。お互いに配慮し合うことで、初めての方もベテランの方も、心地よい湯治の時間を共有することができるのです。
まとめ:後生掛温泉のオンドル宿泊で心身を整える
秋田県を代表する秘湯、後生掛温泉のオンドル宿泊は、大地の熱を全身で受け取り、心身を根底からリセットできる特別な体験です。床から伝わるじんわりとした温かさは、現代社会の冷えや疲れを優しく解きほぐし、深いリラクゼーションを与えてくれます。
豪華な設備はありませんが、そこにあるのは「本物の温泉」と「大地のエネルギー」、そして「静寂な時間」という、何よりも贅沢な要素ばかりです。泥湯や箱蒸し風呂といったユニークな温泉体験、そして自炊を通じて自分の体と向き合う時間は、忘れていた本来の自分を取り戻すきっかけになるでしょう。
今回ご紹介した持ち物や過ごし方のポイントを参考に、ぜひ一度、後生掛温泉のオンドル部屋を訪れてみてください。八幡平の雄大な自然に抱かれながら、床の上で何もせずに横になる。そんな究極の「何もしない旅」が、あなたの日常を支える新たな活力になるはずです。次の休みは、秋田の山深くにあるこの温かな聖地へ、体一つで癒やされに行ってみませんか。


